調査レポート 現場は仕事力をどうとらえているか? ビジネスパーソン・アンケートに見る仕事力認識

仕事力とは「全体を見通す力」と「関係をつくる力」。そして、こうした仕事力は、何より、活力のある職場で働く経験を通じて生まれてくる――Session1で実施した労政時報クラブ登録者へのアンケートでは、企業の人事担当者が仕事力について持っているこうした認識が浮き彫りとなった。

この疑問を解くため、今回、仕事力プロジェクトSession2では、「過去1年間継続的に働いていた方」に対し、仕事力についてどのような認識を持っているかを問いかけるウェブ・アンケート調査を行った。 対象は20代から50代までの男女計831人。うち69.6%が正社員/正職員、7.8%が嘱託/契約社員、20.6%がパート・アルバイト、残りの2.0%が自営業・自由業。正社員/正職員の中には、係長級が17.0%、課長級が16.1%、部長級が7.6%含まれている。また、従業員規模も30人未満から1000人以上まで分布しており、いま日本で頑張っている現役のビジネスパーソンを代表するサンプルとなっている。
では、彼ら/彼女たちは、仕事力をどのようにとらえているのだろうか。その結果を見ていくこととしよう。

仕事力のイメージとは

仕事力ある企業ランキング、1位は「組織力」のトヨタ

「仕事力がある」というのは具体的にどういうことだろう。どんな企業、あるいは人が「仕事ができる」というイメージになっているのだろうか。まずは、この単純な問いから、人々の意識を探ってみよう。

まずは企業。自由記入で「仕事力がある」と思っている企業名を挙げてもらったところ、1位はトヨタ自動車。次いで2位ユニクロ、3位パナソニック、4位ソニー、5位ソフトバンクという結果となった。特にトヨタは、男女とも回答者の1割以上が支持。大差での首位となっている。

理由を見てみると、トヨタでは、「高度な技術力と部品調達価格の低減および生産コストの低減により、世界で認められていること。また、ISOなど問題にしないトヨタ規格を持っていること」「工場の現場でカンバン方式や社内の表彰制度で工夫を凝らし、生産性の向上に努めていることがすごいと思う」など、カンバン方式に代表される組織力を指摘する声が多い。また、「リコール問題を乗り越えたから」という危機への対応を理由とした回答も多く見られた。ほぼ同じ回答傾向となっているのが3位のパナソニックで、ここも組織全体としての顧客対応力やリコール問題への対処が仕事力を感じる理由に多く挙がっている。

これに対し、ユニクロ、ソフトバンク、楽天などの国内企業、Apple、Googleなどのアメリカ企業については、その勢いと革新性を指摘する声が多かった。経営の革新性で急激に成長を続けている企業群を押さえ、高い組織力を備えたトヨタとパナソニックが、仕事力イメージで上位をキープ。
まとめてみると、こうした傾向を、企業の仕事力ランキングに読み取ることができるのではないだろうか。

※イタリック体は回答文からの引用。以下同様。


個人ランキングは、イチロー、たけし、紳助

一方、個人のランキングは、イチロー、北野武(ビートたけし)、島田紳助が、僅差で1位、2位、3位に並ぶ結果となった。次いで少し離れて4位明石家さんま、また少し離れて5位星野仙一となる。

イチローの理由は、常に結果を出し続ける力とそれを支える自己管理力。WBCの際に印象的だった熱いリーダーシップを挙げる声も多かった。
チームや周りとの関係性を指摘する声は、実は、たけし、紳助、さんまの回答内容でもかなり多い。「個人の資質のようでいて、他人との関係を大切にしているから」(たけし)、「番組やプロジェクトを企画・立ち上げて軌道に乗せている。そこに持っていくまでの関係者や関係部署への立ち回り方や行動力に並外れたものがあると思う」(紳助)、「相手の反応を敏感に受け止め、臨機応変に対応」(さんま)。
個人の才覚はもちろんだが、それにとどまらず、周囲を巻き込んでいく力を発揮できているかどうか。それができてこそホンモノの仕事力、ということになるだろうか。

重要なのは、巻き込み、巻き込まれる力

上記の企業ランキング、個人ランキングの背景にある、ビジネスパーソンの仕事力に対する認識は具体的にどうなっているのだろうか。まず、どんな力があれば「仕事力がある」と思うのか。その因子を見てみよう。

戦略力
本当は何が必要か、そのためには何をすればいいかを的確に判断できる「戦略力」
個人としての優秀さ
ひとりで手早く様々な課題をこなしてしまう「個人としての優秀さ」
専門家としての力
非常に高度な知識、専門的なノウハウを持っている「専門家としての力」
段取り
トラブルなくスムーズにそれぞれの仕事を管理し、進めていくことができる「段取り」
調整力
取引先、お客様、上司、部下などの関係者と円滑にことを進めていく「調整力」
堅実さ
言われた/与えられた仕事を着実にこなしていく「堅実さ」
主体性
どんな仕事も自分のものとして捉え、当事者として責任感をもって実現する「主体性」
リーダーシップ
周囲の様々な人を巻き込み、チームとしての力を発揮させる「リーダーシップ」
コミュニケーション力
日ごろの情報共有がスムーズに出来る「コミュニケーション力」
職人性
ひとつのことを突き詰めて完成度を上げていく「職人性」
人脈力
使える人間関係を作り出すことができる「人脈力」
向上心
設定した目標に向かってチャレンジする「向上心」

全体の48.9%が回答しているのが、「本当は何が必要か、そのためには何をすればいいかを的確に判断できる『戦略力』」。次いで「ひとりで手早く様々な課題をこなしてしまう『個人としての優秀さ』」(37.2%)、「非常に高度な知識、専門的なノウハウを持っている『専門家としての力』」(36.3%)が並び、「トラブルなくスムーズにそれぞれの仕事を管理し、進めていくことができる『段取り』」(29.6%)、「取引先、お客様、上司、部下などの関係者と円滑にことを進めていく『調整力』」(27.2%)と続く結果となった。

興味深いのは、個人として仕事をこなしてしまう優秀さや専門性を押さえ、仕事の全体を見通して何が必要かを見極める「戦略力」が1位となっていることだ。また、「段取り」や「調整力」のスコアもかなり高い。このあたりのモノの見方が、単に個人としての才覚があるのではなく、全体を見通し、周囲を巻き込んでいく力を持っているタイプの有名人を「仕事力のある人」と感じさせる背景になっているのではないだろうか。

一方、職人的な在り方については、「ひとつのことを突き詰めて完成度を上げていく職人性」(7.9%)と、ほとんど評価されていない。何ごとも「道」として突き詰める求道精神こそが「もの作り」大国の日本を支えてきたのだ、という説をよく聞く。だが、この結果を見る限り、必ずしもそういった受け止め方は一般的ではないようだ。 求道精神より、戦略力――どうやら、これが、21世紀の日本における「できる人間像」のようである。

仕事力は組織・現場から生まれる

ビジネスパーソンの仕事力についての考え方を吟味するためには、個人としての仕事力を見ていく因子だけではなく、個人と組織、働く人と職場の関係についてどうとらえているかについても押さえていく必要がある。人は一人で仕事をしているわけではない。誰もがこのことを前提に考えているはずだからだ。
この点を見ていくために実施したのが、下記の価値観質問である。

一目見て分かるように、ほとんどの人が、仕事力は一人で発揮できるものではない、と強く認識している。周囲との緊密なコミュニケーションがなければいい仕事はできないし(「コミュニケーション量の多さは、高い仕事力を生み出すベースとなると思う」人72.9%)、そもそもいい職場でなければ、中にいる人が優秀でもいい仕事などできるわけがない(「どんなに優秀な人が集まっていても、いい組織でないと高い仕事力は発揮できないと思う」人63.9%)。だから、職場を愛し、周囲の人を愛する気持ちは重要だ(「職場への帰属意識や一緒に仕事をしている人との連帯感、愛社精神は高い仕事力に繋がると思う」人65.6%)。

個人としての視点で見た場合、仕事力とは、全体を見渡す戦略力を中心としつつ、個人の才覚と周囲への段取り・調整力を合わせたものとして意識されてくる。だから、イチローやたけし、紳助のように、才能があり、かつ全体をプロデュースし、周囲を巻き込んでいく実績を持った有名人が仕事力ランキングの上位に入ることとなった。

一方、全体を見渡す視点から見ると、一人ひとりの個人だけがバラバラにいても、決して仕事はうまく回るものではない。そう思うからこそ、企業の仕事力ということでは、勢い/成長性に加え、組織力の有無が気になる。確かに、現状はユニクロやソフトバンク、もっといえば天才的な人材を多く抱えるといわれるAmazon、Googleが圧倒的なのかもしれない。でも、「仕事力がある」というなら、やはり世界に冠たる生産組織を生み出したトヨタは外せないのではないか。

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