調査レポート 現場は仕事力をどうとらえているか? ビジネスパーソン・アンケートに見る仕事力認識

仕事力を育てるためには

仕事力は重要だが、現状は衰退気味

仕事力を巡る昨今の現状を、ビジネスパーソンたちはどのようにとらえているのだろうか。まず、仕事力という観点が日本企業の今後にとって重要かどうかという問いについては、87.9%の人が「重要と思う」と回答している。では、現在の日本で仕事力が向上しているかというと、47.5%が衰退気味と答えている一方、逆に向上しているという回答は10.2%にとどまっている。この傾向は、年齢が上がれば上がるほど高くなっている。

理由は何だろうか。最も高いのは「部下を育てる上司が減ってきている」の61.0%。次いで「リストラ等で仕事に余裕がない」43.8%、「若い人の社会常識の低下」40.3%。労政時報クラブのアンケート結果と同様、「近頃の若い者」論が少ないわけではないが、それよりも現状の職場の問題ととらえている人のほうが多い。

仕事力をつけるのは経験と現場の指導

このごろ日本の企業の仕事力が減退している理由は職場にある。人々がこのように思っていることは、「どうやれば仕事ができるようになるか」という点に関する価値観質問により強く表れている。

「従業員の仕事力を高めるために重要なのは現場でのしっかりとした指導・育成ができる職場づくりだ」と思っている人67.1%。「入社当時の上司の在り様と仕事力の高低は関係が深いと思う」66.0%。「従業員の仕事力をアップさせるためには、基本的に褒めて育てるほうがいいと思う」65.3%。「仕事力をつけるには、教育・学習よりも、経験の積み重ねが重要だと思う」54.5%。

『やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ』(山本五十六)。古典的ではあるが、多くの人の気持ちは、いまだこの言葉どおりであると言えるかもしれない。

自分が成長したのは職場での「言葉」と「経験」

価値観質問の回答は、単なる思い込みからの判断ではない。「自分の成長のきっかけ」として回答者が経験してきたことを見ても、まったく同じ傾向を見て取ることができる。

自分が成長するきっかけとなった経験で一番高いのは、「職場での上司からのアドバイス」(27.8%)、2位が「職場での同僚や先輩からのアドバイス」(23.5%)。まず、現場でのコトバが来る。その次に「業務上のいわゆる失敗体験」(21.4%)、「難しい仕事を一人で乗り切った経験」(17.9%)、「難しい課題を皆で乗り切った経験」(14.8%)と自らの体験が続く。
一方、いわゆるOFF-JTは、「読書や自費参加セミナー等」(12.8%)や「社内研修や会社関係のセミナー」(12.2%)と、現場でのコトバや体験に比べ、寄与率が低い。現場を離れた知識は、役に立たないということではないが、決して主役とはならないのである。

ここで注意しておくべきなのは、上記の回答が、決して、単なる体験主義の有効性を示しているわけではない、ということだ。回答数値が示すとおり、まず必要なのは、上司や先輩、同僚などからの具体的なアドバイス、つまり「コトバ」である。ただ仕事をさせる。背中を見せ、後は盗ませる。そういうことだけで人が育つわけではない。現場に共にいる誰かからのコトバ。それがあってこそ、はじめて人は仕事力を身に付けることができる。
職場における対話。現場でのダイアローグ。経験は重要だが、さらに重要なのは、経験の場での一言である。コトバにしなければ/ならなければ、成長にはつながらない。

現場に豊かな対話力を

ビジネスパーソンの多くは、仕事力の源は「単なる個人の才覚ではなく、優れたチーム、活気のある組織」なのだと感じている。だからこそ、仕事ができる人の上位にWBCでチームを引っ張ったイチローやプロデュース力の高い芸能人が並ぶのだし、仕事ができる企業ランキングの上位にトヨタ/パナソニックという組織重視のメーカー名が、直近の業績に関わらず出てくるのである。
仕事力は生き生きとしたコミュニケーションが活発になされている職場、メンバーが高いコミットメントを持っている現場からこそ生まれてくる。そこで現実の体験に裏付けられたダイアローグが上司や先輩と豊かに行われていくこと――これこそが仕事力が育っていく、人が成長を遂げていく最大の源泉となる。体験だけでは足りないし、理論や知識はサポートでしかない。コトバは具体に裏打ちされなければならず、具体はコトバがあってこそ、気付きに、成長につながるのである。

日本企業のこれからにとって最も重要なのはこうした意味での仕事力であり、それが生まれてくる現場である。しかし、ビジネスパーソンの多くがそこに不安を感じている。企業の現場において、本来最も重要なはずである上司と部下との、先輩と後輩の、そしてチームの仲間同士の対話が失われているのではないか。その結果、日本企業の成長に、日本の社会経済の立ち上がりに、一番求められている「仕事力」自体が、いま、逆に一番の危機にあるのではないか。
この危機への応答がなされていないこと。意識だけはあっても、具体的にどのような対応をすればいいのか、その方策が明確とはなっていないこと。これが、今回のビジネスパーソン・アンケートと、人事担当者を中心とした労政時報クラブのアンケートの結果に通じている、仕事力を巡る最大の課題点ということができるのではないだろうか。

トップページへ

ページトップへ

ページトップへ