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日本経済新聞社との共催による今回のシンポジウム『日本の仕事力は再生できるか〜勝ち抜く経営のための人的資源戦略〜』は、500人近い大勢のご来場をいただき、講演者の方々から提示された多くの論点と、それをめぐる活発な議論をもって無事終了した。
グローバル化とともに世界の経済地図が大きく変容している現在、競争優位の地歩を築くために日本企業はどのような戦略を描いていくべきか。基調講演をいただいた伊藤元重東京大学大学院教授は、ヨーゼフ・シュンペーターが説いた"創造的破壊"、既存の構造を激しく突き崩す大きな変化が、日本企業に厳しい転機と新たなチャンスをもたらすことを示唆。そこで勝ち抜くためには、国内市場の土俵にとどまらず、世界で比較優位に立つための戦略を先鋭化させていくこと、そこに向けたグローバル人材育成と活用の必要性があることをご指摘いただいた。
特別講演の野田 稔 明治大学大学院教授は、移りゆく成長企業モデルの具体的な姿を示す一方、イノベーションの創造を阻む現状の組織構造の問題を指摘。多くの企業が指向したフラット型組織が、今日、人材育成や現場での業務改革推進の足かせとなっていること。これからはその構造にメスを入れ、ミドル層の活躍の場を広げてイノベーション力を喚起していく、そこから現場力の活性化を図る新しい組織づくりが必要であることを強調された。
両氏の講演を受け、パネルディスカッションでは、フリービット(株)組織人事部の酒井 穣ジェネラルマネージャー、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)の吉田 寿プリンシパルに労務行政研究所 WEB編集長の原健を加えた3名で、組織・人事戦略のこれからの方向性についての議論を展開した。
経済活動のグローバル化を加速させているインターネット技術は、職場・組織という枠組みを超えた人と情報のつながり、新しいコミュニティを生み出し、それがワークスタイルや個の価値創造の変化を促している。その人のつながりの中核となって「ハブ」の役割を果たす人材が、企業や社会のイノベーションをリードしていく。そうした人材を企業が成長戦略の下で活用していくうえで、また戦略を支える人材育成を展開していくうえで、組織や人事システムが抱える課題は少なくない。その現実は、「仕事力プロジェクト」のアンケート(session1参照)でも、「仕事力の衰えを感じている」という多数意見から浮き彫りになっている。
では、いま人材の変革を目指す糸口をどこから見出していくべきか。後半のディスカッションで議論を集めたのは、"ソーシャル・キャピタル"というキーワードだ。人とのつながり、関係性の中で個の成長が促される。そのつながりをより強く豊富にしていくこと=ソーシャル・キャピタルを高めることが現場の力を活性させていくためには欠かすことができない。酒井氏からは、同期入社や課長会といったヨコあるいは斜めの関係強化の重要性が指摘され、コーディネーターの野田氏からは、「リフレクション・ラウンドテーブル」というリーダー育成プログラムで展開しているマネージャー間でのコミュニケーションからの成果が披露された。また、多くの企業の人事コンサルティングに携わる吉田氏からは、評価者研修での評価の悩みをめぐる議論が、管理者の新しいコミュニティ形成につながり、それを支援する人事担当者との信頼関係向上に寄与しているとの現場談をいただいた。

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今回のシンポジウムで、出演者の方々から何度となく挙がった"イノベーション"というキーワード。それはいま、グローバル化経済に立ち向かう日本企業に、そしてその組織と人材に求められる変化の在り方を象徴している。それこそが、私たちがこれまで検証してきた「仕事力」すなわち戦略力とチーム力を組み合わせた現場経営力が広い社員層に求められている一つの背景と言えるだろう。
イノベーションを生み出す力を育て、それを発揮させる土壌としての組織の在り方。その新しい方向性を考えていくことが、これまでのアンケート研究や2回のシンポジウムを通じて浮かび上がった大きなテーマと思われる。具体的には、組織の"ハードウエア"=組織デザインや制度の在り方と、組織の"ソフトウェア"=人のつながり構築やエンパワーメント、コミットメントといった動機付け――という2面から考察していくことが必要と言えるだろう。
これから「新しい日本の仕事力を生み出そう」プロジェクトでは、こうした『組織づくり』の方向性に視点を置き、どのような変革が求められるのか、そして人事部門や経営企画部門にとって施策・支援が必要とされていくのか――により注目して研究を進めていきたい。


