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これまでの日常を一瞬で変えてしまった東日本大震災。いままで見てきたように、日本の企業に勤めている管理職の方々にとって、それは決して対岸の火事ではなかった。多くの人々が直接の被害を、間接的な影響を受け、その一方で、義援金やボランティア、そして企業としての支援活動と、震災対応に能動的に関与している。
では、そうした体験は、自らの仕事の在り方、あるいは職場の在り方に対する価値観・考え方にどのような影響を与えているのだろうか。アンケートの結果を見ると、全体の39.1%が自らの働き方を、54.8%が職場の在り方を「震災を契機に変えるべき」と回答している[図10]。実際に被害を被った方々に限定するなら、その比率はさらに上がり、働き方では51.2%、職場では62.8%にも上る。
東日本大震災は、すでに、これだけの意識の変化を起こしている。日本の企業は、そこでの働き方は、これから大きく変わっていかざるを得ないだろう。
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職場も企業も、この悲劇を契機に変わらなければならない。そう感じた回答者は、では、どういった変革、変身を考えているのだろうか。
ここでは職場の在り方に限ってその方向を見てみたい。フリーアンサーの再集計の結果を見ると、その第一は「現場での対応力」の15.4%。次いで「自発的な社員の育成」11.0%、「組織間の連携」8.1%、「フレキシブルな対応」8.1%の順となっている[図11]。
具体的なフリーアンサーを見てみよう。「現場(現地)で実行する仕組みに変えたい」「各自が個人で判断できる(する)範囲の拡大」「(強いリーダーシップは必要であるが)各個で考え、指示無くとも応用をきかせた行動を求めたい」「組織間の壁、業務分掌の壁を乗り越えた迅速かつ柔軟な組織、機能、対応が必要」「フレキシブルな組織運営で、従来の規定に捉われない動きができること」
並んでいるのは、現場の自律を、柔軟な対応と連携を、そしてそれを支える当事者意識をもった各社員の在り方を求める声である。
すぐに見て取れるのが、「いざというときに強い組織の基本」(前掲[図6])との回答傾向の差である。「強い組織の基本」では圧倒的な1位だった「トップのリーダーシップ」は、ここでは、全体8位、5.9%へと回答率を落としている。この差はなぜ出てきているのだろうか。
大きな違いは、「強い組織の基本」では一般論としての回答を求めたのに対し、この質問はあくまで「自分の職場、自分の会社が変わるべき方向」を問うている、ということである。自分ごととして回答しているかどうか。それが差を生み出した最大の要因といえるのではないか。
この推測を支えるもう一つの証拠として、先に見た、自社での震災対応の経験から「いざというときに強い組織の基本」を回答していただいた方の回答傾向を挙げることができる。そこでも、全体傾向より、明らかに現場重視の選択肢が多くなっていた。
自分ごととして捉える。自らがどう変われるか、という視点からこれからの在り方を突き詰めていく。そういった自覚が現場の自律という回答へとつながっていると考えるのは、ややうがった見方に過ぎるだろうか。 -
新しい日本の仕事力を生み出したい。これが、私たちが「仕事力プロジェクト」を始めた問題意識だった。
東日本大震災という未曾有の危機に直面し、様々な方が仕事や組織について感じられたこと。実は、私たちは、そこに仕事力プロジェクトと通底したものがあると考えている。なぜなら、どちらも先が見えない危機に対し、どのように対応していくべきか、その時、企業の組織は、そして人づくりはどうあるべきかという同じ問題に立ち向かっているからだ。バブル崩壊後の20年間、日本経済は激変する世界経済の只中で、先の見えない闘いを続けてきた。それは個々の企業においても、またそこで働く人についてもまったく同じである。グローバリゼーションは、今までの産業構造のままでは、旧来のビジネスモデルや経営手法、そしてそこにおける組織や人材育成の在り方では、未来は招き寄せられないという厳しい現実を日々突きつけ続けている。
不確かな未来に向け、今までのやり方に頼ることもできず、それでも進んでいかなければならない。これは、東日本大震災という「想定外」の緊急事態への対応と、時期の長短はあるにせよ、同じ本質をもっているのではないか。
言い換えるなら、私たちが今回の大震災で感じとったこと、評論家的な立場ではなく、当事者として体に刻みつけざるを得なかったことは、そのまま、これからの日本を、そこにおける「新しい」仕事の在り方、企業の在り方を考え、作り上げていく基盤となるのではないだろうか。私たちはそう感じている。自律した現場と高い当事者意識の必要性。それを長期に支える明快な行動指針としてのリーダーシップ。
東日本大震災で得た教訓は、これから日本の仕事力を新たに生み出していく際の、力強い核となっていくはずである。



