『キャリアコンサルタント・人事パーソンのためのキャリアコンサルティング』に関する内容更新

[2022年7月28日更新]


※黄色の網掛け部分が今回の更新箇所

第1章 キャリアコンサルティングと企業人事部門

P24~25

2 企業人事とキャリアコンサルティング

 このところ、企業内のキャリアコンサルタントに熱い期待が寄せられているが、企業領域でキャリアコンサルティングはどの程度普及しているのだろうか。また、キャリアコンサルティング施策が進められる中で、企業領域には何が期待されてきたのだろうか。企業側、とりわけ企業の人事部門で働いている人たちは、キャリアコンサルティングという言葉を、どのように受け止めてきたのだろうか。さらに、企業領域で働くキャリアコンサルタントたちは、キャリアコンサルティングを行う中で何を考えてきたのだろうか。順に見ていきたい。

[1]企業におけるキャリアコンサルティングの導入状況
 厚生労働省「令和3年度 能力開発基本調査」によると、キャリアコンサルティング※1を導入している事業所は42.3%である[図表1-4]。これに対し、令和2年度中にキャリアコンサルティングを受けた労働者は10.6%である。次に、企業がキャリアコンサルティングを行う目的を見ると、多い順に①「労働者の仕事に対する意識を高め、職場の活性化を図るため」、②「労働者の自己啓発を促すため」、③「労働者の希望等を踏まえ、人事管理制度を的確に運用するため」となっている[図表1-5]

※1 調査では、「キャリアに関する相談(キャリアコンサルティング:労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと)を行うしくみで、セルフ・キャリアドックをはじめ、社内規定などで明確に制度化されているものに限らず、慣行として行われるものなども含む」とされている。

 キャリアコンサルティングを行う仕組みには、制度化されておらず、慣行として行われているものも含まれているが、それでも4割程度であること、また、仕組みはあっても、実際にキャリアコンサルティングを受けたのは一部の労働者であることや、労働者の仕事に対する意識を高め、職場の活性化を図ることを目的としていることなどが分かる。

[図表1-4]キャリアコンサルティングを行う仕組みの導入状況

資料出所:厚生労働省「能力開発基本調査」(2021[令和3]年度)

[図表1-5]キャリアコンサルティングを行う目的(複数回答)

資料出所:厚生労働省「能力開発基本調査」(2021[令和3]年度)

第3章 キャリアコンサルティングを行うために必要な知識

P156~158

Column

企業が行う教育訓練の現状(厚生労働省「令和3年度 能力開発基本調査」)


〈企業調査〉

・教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は50.5%(前回50.0%

・事業内職業能力開発計画の作成を行っている企業は21.8%(前回22.5%

※事業内職業能力開発計画:事業主が、雇用する労働者の職業能力の開発および向上を段階的かつ体系的に行うことを促進するために作成する計画(作成は努力義務)

・職業能力開発推進者の選任を行っている企業は17.8%(前回19.0%

※職業能力開発推進者:事業主が雇用する労働者の職業能力開発を計画的に企画・実行し、推進する者(選任は努力義務)

・教育訓練休暇制度を導入している企業は9.7%(前回8.9%

※教育訓練休暇制度:職業に関する教育訓練を受ける労働者に与える休暇

・教育訓練短時間勤務制度を導入している企業は7.5%(前回6.8%

※教育訓練短時間勤務制度:職業に関する教育訓練を受ける労働者が活用できる短時間勤務制度

〈事業所調査〉

※前年数字の一部も修正しているが、これは、2022年4月8日に厚生労働省が公表した訂正によるものである。

・正社員に対してOFF-JTを実施した事業所は69.1%(前回68.9%)、正社員以外に実施した事業所は29.8%(前回29.2%)。一方、「OFF-JTを実施していない」とする事業所は29.5%であった

・計画的なOJTについて、正社員に対して実施した事業所は59.1%(前回56.9%)、正社員以外に対して実施した事業所は25.2%(前回22.3%

※計画的なOJT:OJTのうち、教育訓練に関する計画書などを作成して、担当者、対象者、期間、内容などを具体的に定めて、段階的・継続的に実施するもの

・能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所は76.4%(前回75.0%[参考6]

・キャリアコンサルティングを行うしくみを、正社員に対して導入している事業所は41.8%(前回37.8%)、正社員以外に対して導入している事業所は29.7%(前回24.9%

[参考6]能力開発や人材育成に関する問題点の内訳(複数回答)

〈個人調査〉

○OFF-JT

・OFF-JTを受講した労働者は30.2%(前回29.9%

・雇用形態別では「正社員」(38.2%)が「正社員以外」(15.8%)より高い

・性別では「男性」(36.3%)が「女性」(23.4%)よりも高い

・最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(23.5%)が最も低く、「大学院(理系)」(61.4%)が最も高い

○自己啓発

・自己啓発を実施した労働者は36.0%(前回32.2%

・雇用形態別では「正社員」(44.6%)が「正社員以外」(20.4%)より高い

・性別では「男性」(42.7%)が「女性」(28.1%)よりも高い

・最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(23.9%)が最も低く、「大学院(理系)」(71.5%)が最も高い

・自己啓発を行う上で何らかの問題があるとした者は、労働者全体の「総数」では79.4%(正社員81.7%、正社員以外75.3%)であった[参考7]

[参考7]自己啓発を行う上での問題点の内訳(正社員、正社員以外、複数回答)

P255

[図表3-56]年齢階層別就業者割合(2021年)

資料出所:総務省統計局「労働力調査 基本集計・年平均」(2021年)

P318新規追加

Column

インターンシップについての考え方(三省合意)


 2022(令和4)年6月、文部科学省、厚生労働省および経済産業省は、「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」(以下、三省合意)を改正した。三省合意は、政府、大学等、産業界が、インターンシップの普及・推進を図る上で基本となるものである。
 1997(平成9)年9月に取りまとめられて以降、三省合意では、インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義され、企業は、インターンシップ実施時に得た学生の情報を採用選考活動などに使用してはいけないこととされてきた。
 リクルート就職みらい研究所の調査によると、インターンシップ実施企業、インターンシップ参加学生とも増加傾向にあるものの、期間は短期化しており、2022年卒学生を対象に対面でインターンシップを行った企業においては実施期間1日が70.9%、2日が12.4%、3日以上1週間未満が22.2%を占める。また、政府、大学等は教育目的を強調しているものの、就職・採用目的で実施されているという実態も指摘されている(亀野、2021)。
 このような中、産学の代表からなる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は、2022(令和4)年4月に報告書を取りまとめ、インターンシップについて新たな定義を定めるとともに、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については採用活動開始後に活用可能とするよう、三省合意の見直しを求めていた。2022年6月の三省合意改正は、これを受けたものである。
 三省合意の改正により、企業は、2025(令和7)年以降に卒業・修了する大学生・大学院生については、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報を、採用活動開始後に活用できることとなる。

※就業体験要件(必ず就業体験を行う。インターンシップ実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる)や、実施期間要件(インターンシップの実施期間は、汎用的能力活用型では5日間以上、専門能力活用型では2週間以上)等。

参考文献

・リクルートキャリア・就職みらい研究所(2018)「就職白書2018-インターンシップ編」

・リクルートキャリア・就職みらい研究所(2021)「就職活動・採用活動に関する振り返り調査 データ集2021年卒」

・亀野 淳(2021)「日本における大学生のインターンシップの歴史的背景や近年の変化とその課題-「教育目的」と「就職・採用目的」の視点で」『日本労働研究雑誌』No.733, 4-15.

・採用と大学教育の未来に関する産学協議会(2022)「産学協働による 自律的なキャリア形成の推進」

・文部科学省・厚生労働省・経済産業省(2022)「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」

[2022年6月3日更新]


第3章 キャリアコンサルティングを行うために必要な知識

P48~49

[図表3-1]本書で取り上げる主なキャリアの理論家とアプローチの整理表(黄色い網掛け部分が今回追加した箇所)
※クリックでPDFファイルが開きます

資料出所:筆者作成

P66

1.キャリアに関する理論

[2]キャリア発達の理論
(7)イバラ(Ibarra,H.:1961~)
 イバラについては、後掲10.[4]で説明する。

P265

10.人生の転機とキャリア

[4]イバラ(Ibarra,H.:1961~)
 組織行動学者のイバラ(2003)は、キャリアを変えるのに必要なのは「行動」であるとし、キャリア・チェンジ理論を提唱した。「なりたい自分」に向けて、「可能な自己を探り、それを試し、大きな変化のための土台をつくる、そのうえで、また、可能な自己を探る、というサイクルを回し続けることが必要だ」というのである[図表]
 彼女は、ミドル期にキャリアを変えた者を調べた結果を基に、「アイデンティティは不変のものでなく、多くの可能な自己からなるものだ」「キャリアを変えることは、アイデンティティを変えることだが、別のものに取り替えてしまうものではなく、再構築するものだ」とも述べている。さらに、再構築に当たっては、「小さな規模で試し、新しいネットワークをつくって仲間を見つけ、自分のストーリーをつくり直すのがよい」とし、問い掛け続けること、取り組み続けることの重要性についても指摘している。
 変化のスピードが速まる中で、キャリアをチェンジしていくためには、しっかり考えてから実行するよりも、試しながら考えるアプローチが有効であり、これを続けていくことが重要だというのである。

[図表]アイデンティティの転機

資料出所:Ibarra, H.(2003)Working identity: Unconventional strategies for reinventing your career. Harvard Business Press.Kindle.p.306.を基に筆者作成

引用文献

第3章
Ibarra, H. (2003). Working identity: Unconventional strategies for reinventing your career. Harvard Business Press.

参考文献

第3章
Ibarra, H. (1999). Provisional selves: Experimenting with image and identity in professional adaptation. Administrative science quarterly, 44(4), 764-791.